NO.194
発行年月日:2008/09/25

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トピックス
◇DEHPに関する最近の動き − 安全性情報と規制動向 −

随想
極めて個人的な中国観/中国リサイクル産業現地調査から(最終回)
−中国新幹線“和諧号”に乗車−
株式会社産業情報研究センター 調査・情報室長 林 廣和

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編集後記

トピックス
◇DEHPに関する最近の動き − 安全性情報と規制動向 −

 最近、DEHP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)についての動きが伝えられる機会が増加しています。何か従来と異なる事態が起こっているのではないかと心配される向きもあるかと感じますので、これらを整理してみました。

 6月末に、欧州のREACHにおいて、高懸念化学物質の候補リストに載せる候補としてDEHPを提案したのに続き、7月末には米国でDEHPについての連邦レベルの玩具規制導入が決まりました。このため、あたかもDEHPの有害性が見つかり規制が広がったかのように誤解される方も少なくありません。

 では現実はどうなっているのでしょうか?DEHPは、他の化学物質に比べて希なほどよく安全性データが収集されており、また、詳細なリスク評価が日米欧で実施されている物質であり、安全な使い方が確立されています。例えば、輸血用のバッグの製造にはDEHPが使われており、多くの人命の救助に貢献してきました。

 それでは、DEHPの毒性とは何なのでしょうか?実は、げっ歯類(マウス・ラット)において、大量投与時に精巣が萎縮する、あるいは、胎児の成長が抑えられるという影響が見つかっています。しかし、その後、日米欧でマーモセット等の高等ほ乳類で同様の試験を行なったところ、そのような異常は検出されず、げっ歯類に特異的に出る影響で人体への影響は小さいと推測されています。環境ホルモンの疑いをかけられたこともありますが、SPEED98の徹底的な調査の結果、問題はなかったことが判明しました。このため、日米欧の可塑剤業界は、規制は不要との立場です。

 しかし、安全重視の視点から、乳幼児が直接口にするような製品類には使用をしないという規制が各国で実施されています(日本は2003年、欧州は2006年)。
 DEHPについては、日本では2005年に産業技術総合研究所が、EUでは2008年にECがリスク評価を行なっておりますが、いずれも、現行の規制を超える制限の必要性を否定しています。最近出されたREACH高懸念化学物質候補リストに載せる提案でも同じ見解をとっています。

 米国には、これまで連邦レベルでの規制はなく、いくつかの州において、欧州とほぼ同じ規制を導入する動きがありました。例えば、2007年にカリフォルニア州、2008年にワシントン、ハワイ州で規制が導入されました。各州における規制内容に違いがあると混乱を生じることが懸念されるため、連邦レベルでの規制が検討され、2009年1月1日から実施されることになりました。その内容は、欧州の規制とほぼ同等です。

 いずれの国・地域でも、懸念されている毒性の内容から、乳幼児を主たる保護対象としています(注)。しゃぶるなどして、体重あたりの摂取量が大きくなることが懸念される製品について、DEHPを使用しないことを定めています。
 規制の範囲には多少の差があります。日本は3極の中では限定的です。しかし、実際には、文具、家電のコードなど、規制の対象外の製品群においても、DEHPの使用は行なわれていません。実態としては日本の方がより使用を制限している可能性があります。

 DEHPは、上述のように、安全性にかかる情報が豊富でリスク管理が行き届いている物質です。これを、特段の有害性データが見つかっていないからと言って安全性データの乏しい物質で代替することは、必ずしもリスクの低減にも安全性の向上にもつながりません。
 DEHPは、既に詳細なリスク評価が終了しています。REACHの高懸念物質にリストされた物質は、リスク評価をすることが求められますが、このようにリスク評価が終わっている物質であるため、可塑剤工業会、及び、弊協会は、追加的なリスク評価を求める必要が無い以上、高懸念物質リストに掲載するする必要はないであろうという意見をECに送っております。
 今後、DEHPについての新たな情報が得られれば速やかにご報告させていただきます。(了)

欧米日のフタル酸エステル系可塑剤規制についての比較表をご覧いただけます。
https://www.vec.gr.jp/topics/new111.htm

注 : 規制内容は精巣への影響と成長への影響を考慮したものとなってはいますが、日米では精巣への影響については、げっ歯類とほ乳類との間の種差があることは認められています。他方、成長への影響についてはさらなる研究が必要とされています。欧州では一部の国がいまだに環境ホルモンの懸念を指摘していますが、規制の直接の理由とはなっていません。

随想
極めて個人的な中国観/中国リサイクル産業現地調査から(最終回)
−中国新幹線“和諧号”に乗車−
株式会社産業情報研究センター 調査・情報室長 林 廣和

中国新幹線“和諧号”
 今回の訪中で、初めて中国の新幹線に乗車した。乗車したのは和諧号、乗車区間は上海〜南京である。通常の列車で4時間要する区間を、和諧号は半分の2時間で走行する。和諧号は、中国が2007年4月18日に実施した「第6次全国鉄路提速」(鉄道のスピードアップ計画)に際して導入した高速列車の通称である。実際に乗車してみると、日本の新幹線に比べて大きさが少なくとも一回りは小さく感じられ、車両中央の通路の幅、前の席との間隔などいずれも短めであった。
 車内の液晶画面に表示されている走行速度は時速210kmとなっている。他の列車の南京までの所要時間4時間には途中の駅での何度かの待ち時間が含まれていると思われるものの、やはり走行速度の違いによる時間短縮効果が大きいのであろう。席は満席で、人気のようである。料金は、通常の快速列車に比べて60〜90%高く設定されている。それでも満席になる中国の現状。豊かな人はより豊かになる中国。しかしマナーは感心しないようで、物珍しさからか緊急脱出用のハンマー、自動蛇口、トイレットペーパーの巻き芯、トイレ便座の温度調整つまみなどあらゆる備品が記念に持ち去られるらしい。

 ところで、和諧号に使用されている車両はCRH(China Railway High-Speed)シリーズと呼ばれており、導入技術で生産されている。導入先は1社ではなく、カナダのボンバルディア社、日本の川崎重工業、ドイツのシーメンス社、フランスのアルストム社など複数企業から技術が導入されている。2007年の春節(旧正月)のころに試験投入された「CRH2」は川崎重工業の技術による車両である。ちなみに、新聞報道によればベースは東北新幹線「はやて」、長野新幹線「あさま」などと同じE2系電車である。現時点で、投入台数が最も多いのが「CRH2」との報道も目にした。我々が乗車した車両がどこの技術によるものかは判らなかった。
 南京までの2時間、すっかり闇に包まれた窓外に目をやりながら、まだかなり改善の余地があると思われる「Hexienhao」(和諧号のローマ字表記)の座席クッションが背中に伝えてくる感触に不満を感じているうちに列車は定刻どおりに南京に到着した。

 駅を出てタクシー乗り場に向かうと、そこには長蛇の列ができていた。20分ほど経過してようやく我々の番が来た。すでに時計は9時30分近くを指している。ホテルまでの所要時間は結果的に30分、料金は23元であったが、ドライバーは通訳のSさんにメータを使わずに行くなら50元で行ってあげると囁いたらしい。しかし彼は、メータで行くとだけ答えたようだ。ドライバーの声がやや大きく高くなる。Sさんの声も少しだけ大きく高くなる。結局、ドライバーはメータで走り、我々はリーズナブルな料金でホテルに到着した。

 後日、広州〜東莞で再び和諧号に乗車したが、雨天の中、時速210kmで走行する列車の天井から雨の雫が頭上に落ちてきたのには驚いた。人工衛星で有人飛行を成功させた技術と雨漏りのする新幹線、都市部と農村部の明暗、漢民族と少数民族の顔立ちやその眼差し、訪中のたびに中国は私に多様な顔を見せる。(了)

前回の「極めて個人的な中国観」(第6回)−記憶に残る上海の水郷と北京の精進料理−は、下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/188/index.html#zuisou

上記以前のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

【NEW】VECホームページを更新しました

トピックスに新しい記事を掲載
日本語版 https://www.vec.gr.jp/topics/index.html
英語版 https://www.vec.gr.jp/english/topics/index.html

設計・住宅業者の皆様へ
 今問題になっている内容のセミナーIn名古屋のご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し講演を行ないます。

・日 時  2008年10月3日(金)
13:00〜17:00 (開場 12:30)
・場 所  中産連ビル本館2F 2C室
・主 催  住まいづくり研究会
・後 援 (社)愛知県建築士会【CPD制度認定講習:4単位】
・参加費  無料(定員:先着150名)
・参加申込み締切り:9月26日(金)
・お問い合わせ:住まいづくり研究会
          電話:092(871)2409

PVC Newsが9/16に発行されました。

PVC News66号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。

◇トップニュース1
イオンが塩ビ製ギフトカードを開発。
リサイクルの取組みも
◇トップニュース2
VEC/JPECがプラスチック化学リサイクル研究会の功労賞受賞

最新号、バックナンバーとも、こちらからご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/

ご希望の方には、発行ごとにお送り致します。送付先を以下のアドレスにご連絡ください。
info@vec.gr.jp

編集後記
 湊橋のカモメを覚えていますか?晴れの日には日の当たる南を向いて、雨の日には北を向いてしまうカモメのお話しです。発見した法則を楽しみにその後も観察を行っているのですが、どうやら雲行きがおかしくなってきたのです。何週間もカモメの姿を見かけない日が続き、身勝手な鳩があっちこっちとばらばらな方向を向いていました。ときどき迷い込んだカモメが2−3羽立ち寄ると向いている方向はばらばらです。最近になって、やっと群れらしいカモメの集団にお目にかかるようになりました。すると1−2羽が私の発見した法則に逆らって、晴れた日にもお尻をこちらに向けているのです。何かの間違いかと翌日も観察すると同じような行動を取っていました。春にお目にかかった集団と夏では違うのかも知れません。春は規律の取れた集団で夏は自由奔放な集団だったのかなど。時として、人は目の前の経験を信じることで、身勝手な認識に陥ってしまうことがあります。定点観測などのロングな視点で見直すことも大事なことではないかと反省しているところです。(円行)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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