◇アジア地域との交流 −労働安全、輸送安全、環境問題について− |
ご存知のように、塩ビは石油から作られるエチレンと食塩の電気分解で得られる塩素を原料として作られるため、塩ビ業界は塩素を製造しているクロール・アルカリ業界と深いつながりを持っています。塩ビ工業・環境協会(VEC)は、業界活動の一つとして海外の協会と定期的な情報交換を行なっていることは、時々紹介していますが、8月の末、バンコクでそのクロール・アルカリ業界と合同会議が開催されました。
 |
会場のホテルから見たバンコク市内
|
 |
Stewardship Seminar 風景
|
タイの人口は約6400万人、GDPの成長率は5%(2006年)ですが、塩ビの需要は年率6%で伸びているとも言われおり、最近、塩ビ業界のM&Aや塩ビ製造設備増設の話題もありました。また、塩ビ関連の日本企業が積極的に進出していることは新聞で報道されている通りです。折りしも、バンコクは雨季の終わりで、どんよりとした空が広がっていましたが、朝夕でも外気温は30度以上と蒸し暑い時期でした。一方、ホテルの中は冷房が効き過ぎるくらい効いているため、この時期の日本では着用の機会が少なくなった上着とネクタイは必須でした。とかくアジアの地域のホテルは「冷やし過ぎ」の傾向がありますが、日本のクールビズを見習って室内の温度調節に配慮してはいかがなものかと思ってしまいます。
さて、本題に戻りますと、我々が取り組んでいる情報交換のテーマは、塩ビとクロール・アルカリ業界の労働安全や輸送安全、環境問題に関するものです。今回の会議には、約100名の参加者がありましたが、地元の企業ばかりでなく、タイ政府関係者も20名ほど集まりました。産業界が主催する講演会に多くの政府関係者が参加したり、女性の姿が多いことは、日本の化学業界の集まりではあまり見られない光景ではないかと思います。
会議では、塩ビ業界から、欧州の塩ビ製造者協会(ECVM)と米国の塩ビ協会(VI)そしてアジア太平洋地域としてAPVNやVECがそれぞれの状況報告を行いました。一方、クロール・アルカリ業界からは、世界塩素協議会(WCC)と米国の企業さらに地元タイからそれぞれプレゼンが行われました。特に、日本からの報告では、塩ビは製造段階でのエネルギー消費量が少なく省資源材料であることから資源循環型社会に貢献する素材であることや、地球温暖化対策に貢献するとして環境省の庁舎には塩ビサッシが取り入れられていることを紹介しました。また、環境問題として、日本の塩ビ製造工場から排出されるVCMとEDCの排出削減技術を織り交ぜながら、日本の化学業界が1990年代から取り組んでいる有害大気汚染物質削減について報告した結果、講演後のコーヒーブレークの間も、地元の参加者から、質問が数多く寄せられていました。その背景には、ちょうどタイでは、日本政府の援助を受けて環境中のVOC(揮発性有機化合物)対策に取り組んでいるということがあったようです。日本の環境省に当たる部署のPollution Control Departmentの役人は、「VCM、EDC対策にも非常に参考になった」と話してくれました。
一方、タイの産業界の取り組み事例として、塩素製品の製造業者と輸送業者がタイアップして、塩素製品のトラック輸送に関する安全教育や事故時の緊急対応を24時間体制で行っている事例が紹介され、参加者一同の熱い視線を集めていました。
世界の関連する産業界が保有している経験や情報の共有化を図るこのような活動を、Stewardship Seminarと呼んでいますが、今回のこのような催しが、アジア地域の産業界の進展に貢献していけるものと思っています。(了) |
|