NO.148
発行年月日:2007/10/11

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トピックス
◇塩ビ製造工場の無事故・無災害を目指して
  − 第20回VEC合同保安会議開催 −

随想

カベガミ今昔物語(5) − 壁紙市場の成長と今後に向けて −

トキワ工業株式会社 顧問 石坂昌之

お知らせ
【NEW】日経住まいのリフォーム博 2007 出展 &
     第5回「住まいと環境・エネルギーセミナー」開催案内
NEDOの補助金事業公募、締切せまる。

編集後記

トピックス
◇塩ビ製造工場の無事故・無災害を目指して
  − 第20回VEC合同保安会議開催 −

熱心な意見交換が行われた分科会
木原室長の特別講演
 安定で、耐久性・加工性など優れた特徴をもつ塩ビ樹脂ですが、その製造にあたって大きくは塩ビモノマー製造工程と塩ビ樹脂製造工程の二つの工程から成り立っています。前者では、エチレンと塩素を出発物質として二塩化エチレンを生成し、これを分解することにより塩ビモノマーを製造します。後者では、生成された塩ビモノマーから重合反応により塩ビ樹脂を製造します。どちらの工程でも大量の危険・有害物質を取り扱うため、製造部門では常に安全操業を心掛け、一時たりとも気を抜くことは出来ません。

 VEC会員企業(10社)を合わせれば、全国に7つの塩ビモノマー工場、14の塩ビ樹脂工場があります。VECでは、塩ビ製造工場の無事故・無災害を目指して、技術WG/工場保安サブWG主催の合同保安会議を毎年開催し、各工場間の情報交換を行っています。今年は、9月6〜7日に、徳島県鳴門市のルネッサンスナルトにて、モノマー、樹脂それぞれの工場より21名の参加を得て開催されました。

 皆さんは、「ハインリッヒの法則」をご存知でしょうか?一つの重大災害が起きた時は、その前に29の軽度の災害が発生しており、更に300のヒヤリハット災害がある、というものです。従って、どの製造工場でも「ヒヤリハット」の抽出を活発に行い、その原因解明・対策立案を徹底的に行うことで事故・災害の防止に努めています。合同保安会議でも、まず、モノマー工程・樹脂工程に分かれて「ヒヤリハット」事例検討会を行いました。それぞれの工程においては、取り扱い物質や製造しているものがほとんど同じですから、他社事例も極めて身近に感じられ、熱心な意見交換とともに、「たいへん参考になった。」という感想をいただきました。

 続いてのプログラムは工場に関連した共通テーマとして、「技術継承」と「環境対策」を取り上げ、グループ討議を行いました。ベテランの大量退職はどこも共通の課題ですが、決め手となる技術継承対策は簡単に出てくるものではありません。「環境対策」も同様で、今後も地道に取り組むしかないことが、改めて再認識されたところです。

 特別講演は、最近、航空機事故が起こるとコメンテーターとしてメディアに登場することが多い「日本ヒューマンファクター研究所」より木原リスク管理研究室長をお招きして、「ヒューマンエラーは防げない、しかし・・・」という演題で、お話をお聞きしました。ヒューマンエラーを起こす人間の行動特性の説明から災害の防止対策まで、多彩な事例を交えた講演はたいへん参考になるものでした。事故・災害防止にも「打ち出の小槌」はなく、顕在化した事故・潜在的なヒヤリハットに対して、設備だけでなく関わる人間の心理まで踏み込んで原因を突き詰めて徹底的に対策を行うことの重要性を、参加者一同理解したと思います。

 最後に全体会議を行い、各分科会でのトピックス紹介、全体総括を行い締めくくりました。ちょうど関東地方を台風が直撃した日でしたが、鳴戸地方は穏やかな陽気でした。とは言え、開催中は一歩もホテルを出る時間もなく、参加者全員がそれぞれのテーマに集中して取り組んでいただきました。

 この合同保安会議も、早いもので今年で20回を重ねました。今後も企画を練り上げ、参加者・会員各社の役に立つよう努めてゆきたいと思います。安全で優れた塩ビ樹脂は、安全・安定で環境に配慮された工場で生産されてこそ価値があるということを肝に銘じて、取り組んでゆきたいと考えております。(了)

随想
カベガミ今昔物語(5) − 壁紙市場の成長と今後に向けて −
トキワ工業株式会社 顧問 石坂昌之

 防火材料として塩ビ壁紙が認知され、登場したのは壁紙の主流が織物壁紙や襖紙を改良し開発した製品や、防火性能からガラス繊維やヒル石粉末を接着固着した壁紙等の新しい製品が多く市場に出て来た時代で、織物の「イミテーション」だと云われながらも、塩ビ壁紙は、他の材料と比べ生産効率の優位性、安価であった事から使われ始めました。壁紙への参入も製紙メーカー以外に塩ビレザーメーカーも増え、各社のエンボスロールの開発や印刷技術の開発が進み、その結果、意匠性加工のバリエーションも増え、織物調やジュラク調のデザインも多く開発されてきました。表面強度も強く、耐久性も優れた塩ビ壁紙は、製紙メーカーとの共同開発による複合材料として施工性が良くなった事も加わり、壁紙の主流に育って来たと云えます。

 しかしこの頃の市場は防火性能を重視する公共建物やホテルなど商業施設関係が多く、住宅分野での使用は余りありませんでした。その後、壁紙のJIS規格化と相応し、公団住宅が塩ビ壁紙を仕様に入れた事に伴い、住宅分野としては公営住宅や民間企業の集合住宅(社宅や寮等)へと広がった事で徐々に市場が広がったと云えます。しかしながら民間のマンションでは麻布(ヘンプ壁紙)やレーヨンの薄手の織物が使用され、建売住宅では化粧合板や塗り壁が主流で、一部屋か二部屋の壁に織物壁紙が特記仕様として使われる程度で、壁紙は当時の住宅では高級品に位置付けられていたようです。

 年間150万戸以上を推移していた新築着工数が昭和55年頃から低迷し、115万戸程度まで落込んだ事で、住宅も量的には満たされた時代となります。住宅も量より質だ!!とか、リフォームと云う言葉もこの頃より出て来たと思います。
 「ウサギ小屋に住む働き蜂」や「遠い、高い、狭い」と云う住宅の質の批判も含めたような流行語が話題にもなりました。そうした中で、質の良い廉価な住宅供給と云う事で「ハウス55」計画が国の手で推進企業化し、その際の内装仕上は塩ビ壁紙でした。
 その後のバブル景気の中で、規格型メジャー住宅への塩ビ壁紙の採用と相まって、壁紙市場は7億平米となり、バブル崩壊後の現在も新築戸数100万戸強の状況でも同じレベルで安定した推移をみせています。

 こうして住宅に必須の仕上材になりましたが、ホルムアルデヒドに始まったシックハウス問題では壁紙も矢面に立たされました。壁紙自体はホルムアルデヒドの発生源ではなく下地からのものでしたが、謙虚にシックハウス問題を受け止め、ホルムアルデヒドの業界規格も設け、公的機関の実験にも協力して発生源ではないことを訴え、住宅業界や消費者の理解は得られて来ました。

 もうひとつの重要な課題のリサイクルについても、平成12年頃から取組みを始め、リサイクルを容易にするための表示、平成15年度からはケミカルリサイクル手法によるモデル事業の実施を経て様々な取り組みが現在も日本壁装協会が中心となって進行中です。
 さて塩ビ壁紙は我々が開発を始めた頃の予想をはるかに超えて7億平米に成長し、現状も安定して使われていることの理由を分析してみる必要があります。新築の仕上材として優位であると共に、壁紙は張替える事で住環境の変化に対応出来る点が内装仕上材としても優位な地位を獲得したと推測します。

 今後この壁紙を更に永続的に使っていただけるようにする為には、もう一度塩ビ壁紙いや“壁紙とは何か”も整理してみる必要があると感じるこの頃です。塩ビ壁紙の価値としてはやはり優れた意匠性と施工性が挙げられます。意匠性は塩ビ樹脂の可塑性を生かしたテクスチャーと印刷を含めた加工技術開発であり、他の仕上材の追従は少ないと思いますし、安全性や各種機能と併せて時代に即した変革も可能な材料だと考えられます。
 残念な事は壁紙が張替え出来るという特徴を示す“剥し易さ”が今の壁紙から忘れられて来ている点です。これは防火材料と云う事で有機質を構成材から減らす努力?をした結果かもしれませんが、今後の壁紙の発展を考えた時は大事なテーマだと思います。元々「ピーラブル性」層間剥離、下地材表面から剥れる「ストリッパブル性」は壁紙の大事な要素であったと思います。

 (注)ピーラブル、ストリッパブルはいずれも剥離の容易性を意味する技術用語

壁紙出荷量(日本壁装協会)
(クリックで拡大します)
 今から30年以上前ですが紙素材で壁紙の開発を進めた頃一番苦労したのはこの点でした。JIS規格にも業界規格にもこれに対応する項目に当る数値も言葉もありません。
 住い手の生活環境や家族構成も変化するし、又住宅戸数が所帯数を15%近く上回って来た昨今では、国の住宅施策も大幅変わって居り、耐久性も考え、200年住宅の話が出たり、住宅業界も増改やリフォーム方向に進んで来ていると考えられます。更に、廃棄物の処理というリサイクル現場でも、剥がし易ければ分別も容易となります。張り替え需要に対する開発費用も業界トータルとして理解も得られるはずと考えられます。
 最終回は私の愚痴も入りましたが、これで「カベガミ今昔物語」も終わりとさせて頂きます。ありがとうございました。(了)

「カベガミ今昔物語」は、下記からご覧頂けます。

(1)【装飾品から建築材料への脱皮】

(2)【東・西壁紙の発展と金唐革】

(3)【近代日本の夜明けと金唐革】

(4)【壁装市場の誕生】


お知らせ

【NEW】日経住まいのリフォーム博 2007 出展 &
     第5回「住まいと環境・エネルギーセミナー」開催案内

 『家族みんなの「暮らしやすさ」を見つける4日間』をテーマに、「日経住まいのリフォーム博2007」が下記の要領にて開催されます。
 樹脂サッシ普及促進委員会、樹脂サイディング普及促進委員会にて出展致します。

・日 時: 2007年10月25日(木)〜28日(日)
10:00〜17:00(最終日のみ16:00まで)
  ・場 所: 東京ビッグサイト(東4ホール)
・主 催: 日本経済新聞社
・入場料: 無料
・日経住まいのリフォーム博2007のホームページをご覧下さい。
http://sumai.nikkei.co.jp/reform/reformhaku/

 この会場内にて、第5回「住まいと環境・エネルギーセミナー」を以下の要領で開催致します。

・日 時: 2007年10月27日(土)
 第1部 13:00〜
 第2部 14:00〜
  ・会 場: 「日経住まいとリフォーム博」
会場内特設ステージ
・参加費: 無料
・主 催: 塩ビ工業・環境協会
・セミナー内容
 第1部:「地球温暖化防止」と「窓とリフォームとの関係」
 第2部:「エコリフォームでSTOP!温暖化」

 第1部、第2部とも、終了後、ご参加いただいた方対象に、ニンテンドーDS.lite他、素敵な賞品が当たる抽選会を行います。
詳細はこちらをご覧下さい。
第5回 「住まいと環境・エネルギーセミナー」案内

NEDOの補助金事業公募、締切せまる。

 以前よりお知らせしていました、NEDOの補助金公募の締切が1週間後の10月18日(木)(17:30必着)にせまりました。
 詳細は、NEDO:独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構のホームページをご覧ください。
http://www.nedo.go.jp/informations/koubo/190913_3/190913_3.html

 様々な補助要件がありますが、一つとして、既設住宅のリフォームで『塩ビサッシ+複層ガラス』の内窓を採用する事により、その費用の1/3が補助されます。
(「エコキュート」との組み合わせも可能です。)

編集後記
 茅場町にも、どこからともなく金木犀の香りが漂ってくる気持ちのいい季節になってきました。今週も3連休、皆さんいかがお過ごしでしたか?3連休が9〜10月で3回、こう続くとだんだん何の休みかわからなくなってしまいます。そんなことわからなくったって休めりゃいいんじゃない、という御仁も多いのでしょうが、敬老の日は9月15日、お彼岸は23日、そして体育の日は、やはりあの東京オリンピック開会式の10月10日じゃないと、と考える方もいらっしゃるのでは?
 上京してからは、車の運転は週末だけになりました。それでも最近は年のせいか、ヒヤリハットばかり。「ハインリッヒの法則」に当てはまることのないよう、安全運転に徹します。(丸茶)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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◆編集責任者 事務局長  東 幸次

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