NO.174
発行年月日:2008/04/24

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トピックス
◇環境省塩ビサッシで断熱リフォーム工事完了
樹脂サッシ普及促進委員会 事務局 大木 茂

随想
プロからのクレームとヤクザからのクレーム(連載15)
国際連合大学 上野 潔

お知らせ
【NEW】VECホームページを更新しました。

編集後記

トピックス
◇環境省塩ビサッシで断熱リフォーム工事完了
樹脂サッシ普及促進委員会 事務局 大木 茂

塩ビサッシ施工後
 No.164に続き今回は、3月26日をもって環境省の省エネ改修工事(塩ビサッシ内窓追加工事)が無事にすべて完了したことを報告します。今回は開口部面積635m、79ヶ所の取り付け工事を土日のみの延べ10日という短期間で完了し、執務への影響もほとんどなかったようです。これで既設分の36ヶ所とあわせ省内全ての窓(4フロア115ヶ所)が塩ビサッシになったわけです。これによって省エネ、CO削減効果に加えてオフィス環境の向上という効果が期待されているようです。環境省も洞爺湖サミットに向けて率先垂範という一面もあるのでしょう。是非ほかの省庁も追随して欲しいところです。

メールマガジンNo.164はこちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/164/index.html#topics

 一方で経産省関連のニュースとしてもNEDOの「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業」(住宅に係るものの補助金予算20億円)の1次募集が行われましたが、なんと、応募総数約5000件、金額にして30億円という公募結果となり、2次募集の枠がなくなるというブレイクぶりで、急遽2次募集は見合わせざるをえないとのことのようです。当委員会を通じて樹脂サッシ採用システムでの申請をご案内し、2次応募を計画されていた方々には本当に申し訳有りませんでした。しかし欧米に比べ遅れているといわれる日本の住宅業界が断熱・省エネに動き出したという意味では大変喜ばしいことだと思います。

 来る北海道洞爺湖サミットに向けて環境省では、様々な催しを企画されているようです。そのなかで「北海道発の塩ビサッシ」というメッセージがあるかもしれません。
 実は北海道において、塩ビサッシはとっくに新築戸建住宅での普及率が90%を超えており、塩ビサッシなくして北海道の家はありえないという状況になっているのです。我が国における塩ビサッシの歴史は意外と古く、北海道では30年以上前から普及が始まっているのです。私事ながら筆者は、1980年に札幌に新入社員として配属されこの業界に入ったのですが、当時北海道ではオイルショック後、省エネ対策の一環として塩ビサッシの普及が始まった頃でした。その後の数年間で一気に普及がすすみ、塩ビサッシが北海道の家の標準仕様になったのです。

 また北海道のような寒冷地だけでなく、いまや世界中で窓は塩ビサッシに置き換わりつつあります。この理由は、優れた性能(断熱性=省エネ性能、防音性、耐久性、塩害対策など)が挙げられますが、もうひとつ忘れてはいけないのが、環境性能です。あまたあるプラスチック素材の中でも、トップクラスの省エネ素材という点です。原料のうち塩由来成分が60%という省資源樹脂なのです。環境負荷の目安となるLCAの観点からも、金属製サッシよりも塩ビサッシのほうが優れているという点も大きな理由なのです。
 都心に位置する環境省のオフィスで塩ビサッシ採用というトピックスも、これまでの寒冷地向け断熱サッシという塩ビサッシの位置づけではなく、今後は地球温暖化対策として日本全国へ広めようという環境省からのメッセージなのかもしれません。地球温暖化対策としても有望視されている塩ビサッシの普及が、日本、いや地球を救うというと、ちょっと言いすぎでしょうか。(了)

随想
プロからのクレームとヤクザからのクレーム(連載15)
国際連合大学 上野 潔

 先日私が住むマンションで、管理会社のミスで管理費の一部の積み立て利子が1年分受け取れないという事態が発生しました。
 これに対して、本来受け取るべき利息を管理会社が補填するなどの対策が講じられたのですが、マンション管理組合には「誠意が無い」「社長から詫び状をださせろ」「管理費用を割り引かせろ」などの要求をする人がいたのです。かつて大手企業に勤務した普通の市民です。業務上のミスに対して損害補償をしたり、管理者から再発防止策の説明や詫び状を出したりすることは当然のことかも知れません。しかし管理費用を割り引かせるのはなんとなく「イヤーな気」がしませんか?法律的なことは別にして、相手のミスに対して「誠意を見せろ」といって金を要求するのは昔も今も「ヤクザ」の常套手段です。だから「ヤクザ」が要求するのなら理解?できますが。

 さるノンフィクションライターが日経BPのWeb上で、彼の友人からの書物(メール便)が届かなかった事故に対して、その宅配業者を名指しで「お客様サービスセンター」の対応を激しく非難していました。80円の料金を返却するとの回答に対し「金の問題ではない」「誠意がない」「謝罪しない」という内容です。これはヤクザよりも始末の悪いクレーマーです。本当に大切な書物であれば、はじめに書留や配達証明などの必要料金を負担すればよいのです。価格とリスクは連動するのです。こういう人に限って「お上」には弱いのだと思います。民間会社はお客を選べません。この人は、自称ジャーナリストですからヤクザの類かもしれません。いやいや、ほんもののヤクザは「誠意を示せ」と言ってお金を取ることが目的ですから、引き際も知っているしWebで一方的に非難することはしないと思いますが。

 クレームをつけて金品をゆする人たちは「クレーマー」と呼ばれていて昔は所謂プロの人が多かったのですが、最近は「普通の市民」がそういう行為をするのです。
 一般消費者を顧客にする多くの企業にはクレーム対応を専門にする「お客様相談室」「お客様サービスセンター」などの部門があります。そこは技術や業務に精通したベテランを配置しています。
 クレーム対応は企業にとって、経営的にも精神的にも負担の大きな業務ですが、実は貴重で重要な情報源でもあるのです。理不尽なクレーマーからの話も時には参考になります。もちろん普通の顧客からのクレーム内容は製品の改良、新製品開発、新たなビジネスモデルのヒントに直結します。
 消費者の「誤使用」「不適正修理」などによる製造者責任法(Product Liability)の範囲外のことも沢山ありますが、そんなクレームの中から「誤使用しにくい製品」「不適正修理がされにくい製品」も生まれるからなのです。発売前の社内試験で全てが見つかればよいのですが、消費者の手元で長年使用してみて初めて「想定外の使用方法や事故」が判明することも多いのです。

 製品設計者にとって一番知りたいのは、自分が設計した製品がどんな最後を遂げるかです。想定外の部分が故障しないか?簡単な部品の故障で製品全てが動かなくならないか?最近はこれらに加えて、使用済みになったとき分解し易いだろうか?有害化学物質が飛散しないだろうか?表示したマークが廃棄段階になっても読めるだろうか?こんなことも設計者は考えるようになりました。拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)の定着とかライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)の普及などといえばその通りなのでしょうが、消費者からの厳しい要求に対してそれに応えようとする日本企業の顧客第一主義がそうさせたのだと思います。

 市民からのクレームに加えて今では、リサイクルプラントからのクレームも増えています。リサイクルプラントからのクレームは、「解体のプロ」からの情報ですから設計者にとっては一層シビアですが有益です。
 「ノンフロン冷蔵庫になって環境を配慮しているというが、可燃性冷媒のイソブタンや可燃性断熱材のシクロペンタンはどうやって安全に処理したらよいのか?」「せっかくリサイクルできる塩ビ製のドアパッキンも外すのに手間がかかる?」「塩ビかどうか表示がないのでわからない」「鉛フリー半田と従来の鉛半田はどうやって見分けるのか?」「レアメタルなどは回収しなくてよいのか?」「まだ使えるような新品がリサイクルされていると見学者から質問が来るが?」

 クレーマーからの言いがかりとは一味違う情報です。実は、こんなやり取りが行われるのは世界でも日本だけのようです。なぜなら使用済み製品のリサイクル処理が製造者に義務付けられているのは日本の家電リサイクル法だけだからです。(リサイクルシステムが異なる自動車の場合や欧州の家電製品ではこんな情報は製造者には届きません)

 ダイオキシンについて4月10日の「化学物質と環境円卓会議」で久しぶりに話題になりました。ゲストからの科学的な報告に対して、塩ビの危険を煽った人々からの意見は相変わらず規制の強化でした。「No!塩ビキャンペーン」は金品を要求したわけではありませんでしたが、環境を人質にとって一般市民を恐怖に陥れた理不尽なクレームでした。まだその影響は残っています。塩ビ工業・環境協会は、今後も塩ビの正しい使用法について、科学的知見とデータを駆使して普及啓発を続ける努力を怠ってはいけないと思います。(了)

参照:市民のための環境学ガイド(安井至 前国際連合大学副学長)
【ダイオキシンの現状】
http://www.yasuienv.net/Dioxin2008.htm

前回の「知的財産権(連載14)」は、下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/171/index.html#zuisou

上野潔様の連載のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

【NEW】VECホームページを更新しました。

1.3月度の塩ビの生産出荷データ掲載。
https://www.vec.gr.jp/enbi/seisan.htm

2.トピックスに新しい記事を掲載。
日本語版:https://www.vec.gr.jp/topics/index.html
英語版 :https://www.vec.gr.jp/english/topics/index.html

編集後記
 水ぬるんだ季節に誘われて、先々週潮干狩りに出かけました。今年の木更津は新聞等で報道されているように、昨年来、「カイヤドリウミグモ」という節足動物の寄生によってアサリの大量死が続いているようです。その昔、「○○の大量死」が起こると「化学物質の影響か?」などと、まず疑いの目で見られたのが化学物質だったような気がしますが、自然界にはいろいろな原因があるようです。ところで、潮干狩り場を管理する漁協では、別の産地のアサリを撒いてお客さんに採ってもらっているとのことです。「別の産地のアサリ」がちょっと気になるところでしたが、持ち帰った海水で砂抜きをしておいしくいただきました。(HI)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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◆編集責任者 事務局長  東 幸次

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