塩ビ樹脂の安全性情報 -塩ビ樹脂は安全です-
塩ビ樹脂(PVC)は、その優れた耐久性が特長です。これは、酸やアルカリなどで化学的に変化することがなく、機械的な性能が長年にわたり維持されるからです。また、PVCそのものが発火あるいは着火、延焼することがないため、火災の防止にも貢献できます。図表は塩ビ製造会社が用意している製品安全データシート(MSDS)の抜粋です。素材としての塩ビの安全な使用に関する情報を示しています。
PVCの中間原料である塩ビモノマー(VCM)は沸点がマイナス13.9℃、引火点がマイナス78℃のガス状の危険物(高圧ガス)であることから、塩ビ製造会社ではその製造工程においてVCMを厳重に取り扱い、安全な労働環境を実現しています。これまで、地域社会に災害をもたらすような事故はなく、また、製造工程管理の瑕疵を原因とした死亡者や罹災者も出ていません。
表 製品安全データシート(Material Safety Data Sheet)
| 製品名 | ポリ塩化ビニル | |
| 単一製品・混合物の区別 | 単一製品 | |
| 化学名 | ポリ塩化ビニル(PVC) | |
| 化学式 | (CH2CHCl)n | |
| 構造式 | ![]() |
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| 官報公示整理番号 | 6-66(化審法) | |
| CAS No. | 9002-86-2 | |
| 危険有害性の分類 | ||
| 分類の名称 | 分類基準に該当しない | |
| 危険性 | なし | |
| 有害性 | なし | |
| 応急措置 | ||
| 目に入った場合 | こすらずに15分間水で洗浄して医師診察を受ける。 | |
| 皮膚に付着した場合 | 水で洗浄する。 | |
| 飲み込んだ場合 | 医師に手当てを受ける。 | |
| 火災時の措置 | ||
| 消火方法 | 空気呼吸器を着用して消火する。 | |
| 消火剤 | 散水、ドライケミカル、泡 | |
| その他 | 燃焼すると刺激性のガスが発生する。ガスの主要成分はHCl,CO,CO2である。 | |
| 漏出時の措置 | 飛散したものを集めて空容器に回収する。 | |
| 取扱い上の注意 | ||
| 取扱い | 火気を近付けない。飛散させない。 | |
| 保管 | 直射日光を避け、換気の良好な冷暗所に保管する。 | |
| 防爆措置 | ||
| 管理濃度 | 該当しない | |
| 許容濃度 | なし(日本産業衛生学会) | |
| 設備対策 | 飛散しやすい場所には、除塵装置付き局所排気設備を設置することが望ましい。 | |
| 保護具 | 必要に応じて以下の保護具を使用する。 | |
| ・呼吸保護具(作業時には防塵マスク、火災時には空気呼吸器) ・保護眼鏡(防塵メガネ) ・保護手袋 ・保護衣(通常は特に必要としない) |
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| 物理化学的性質 | ||
| 外観 | 白色粉末 | |
| 性質 | ||
| 沸点 | なし | |
| 蒸気圧 | なし | |
| 揮発性 | なし | |
| 真比重 | 1.4(20℃) | |
| 溶解度 | 水に溶解しない。 | |
| 危険性情報(安定性・反応性) | ||
| 着火温度 | 391℃ 1) | |
| 引火温度 | 454℃ 2) | |
| 可燃性 | 酸素指数約45の自己消火性樹脂である。 | |
| 酸化性 | 常温では安定である。 | |
| 粉塵爆発性 | 粉塵爆発に対して安定である。 | |
| 安定性・反応性 | 通常の取扱においては安定である。 | |
| 有害性情報 | 不明 ただし有害性を示す事例はない。 | |
| 廃棄上の注意 | 排ガス処理装置付き焼却施設で焼却し、または非危険性廃棄物として埋め立てる。 | |
| 輸送上の注意 | 容器破損及び荷崩れ防止に注意する。 | |
| 適用法令 | 特になし | |
引用文献 記載内容の |
1)伊藤公正編「プラスチックデータハンドブック」工業調査会(1980)。P.116 2)同上。P.110 記載内容は現時点で入手できる資料、情報、データに基づいておりますが、物理化学的性質、危険性等に関してはいかなる保証をなすものではありません。また、注意事項は通常の取扱いを対象としたもので、特殊な取扱いの場合には、用途用法に適した安全対策を施してご利用下さい。 |
また、VCMの発がん性について、1974年、アメリカで塩ビ製造に長年従事した労働者に発症例が報告されました。疫学調査の結果、このがんは高濃度のVCMに長期間暴露した労働者に見られる肝血管肉腫(Angiosarcoma of the Liver, ASL)という特殊な症例であることがわかりました。
したがって、世界各国の塩ビ製造会社は、塩ビ樹脂製造に携わる労働者の安全を守るため、VCM製造プロセスのクローズドシステム化や塩ビ重合缶清掃作業の自動化など労働環境の改善を図ってきました。日本では、労働環境指針値として、1975年、作業環境を幾何平均値で2ppm以下、重合缶内を5ppm以下と設定しています。
なお、VCMは沸点が低い一方、塩ビ樹脂あるいは塩ビ製品は製造工程で加熱プロセスを経ることから、樹脂あるいは製品に残る未反応のVCMはあったとしても極めて微量に留まります。国立医薬品食品衛生研究所による調査では、塩ビパイプで0.61ppm検出された例のほか、食品用容器やラップフィルムなどの製品中の残留モノマー濃度は、定量限界(0.01ppm)以下であったと報告しています。ちなみに、食品衛生法では材質中の残留モノマーの許容濃度が1ppm以下と決められています。
また、一般環境の改善を目的として、塩ビ業界では行政と共にVCMなどの有害大気汚染物質の削減計画にも取り組んでいます。PRTRのデータが示すようにVCM製造事業所からの排出量は年々減少しており、大気中の濃度も指針値(年平均値10μg/m3)を大きく下回る結果につながっています。詳しくは⇒
一方、地下水等で微量のVCMが検出されることがあり2009年(平成21年)に地下水環境基準が設定されましたが、これは、工場事業所におけるVCMの排出によるものではなく、地中に浸透した有機塩素化合物が微生物の働きにより分解され生成しているものと考えられています。
VCMの地下水環境基準設定についてはこちらをご覧下さい。
VCMに関する詳しいことは、産総研化学物質リスク管理研究センターがまとめたVCMの詳細リスク評価書をご参照下さい。
