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エネルギーリカバリー

塩ビを含む廃プラスチックのエネルギーリカバリー

 廃プラスチックを含んだ廃棄物を積極的にエネルギー源として利用する動きが進んでいます。
この背景には、

  1. 焼却施設・技術が大きく進歩し、プラスチックを焼却すると焼却炉を傷めるとか、ダイオキシンを発生するとかの問題は解消されたこと
  2. 化石燃料資源の節約がますます重要となってきたこと
  3. エネルギーリカバリーが環境負荷の低減をもたらす場合が多いこと
などがその理由として挙げられます。

 塩ビ工業・環境協会および塩化ビニル環境対策協議会は、1)塩ビを含む建設系混合プラスチックの実証試験や、2)全国のエネルギーリカバリー・焼却施設の調査によって、下記の結論を得ています。

  1. 産廃のエネルギーリカバリー・焼却処理施設は、ダイオキシン類対策特別措置法の施行後大幅に整備され処理能力も増加しました。
  2. 塩ビ廃棄物または塩ビ混合廃棄物をエネルギーリカバリー・焼却処理できる施設は全国に存在し、そのうち47施設は廃塩ビ製品・部材の受け入れを開示しています。
  3. 塩ビを含む廃棄物の焼却は、設備技術等の進歩により安全に処理できます。
    塩ビを約10%含む建設混合廃棄物の長期焼却試験で、エネルギーリカバリーが支障なくできることを実証しました。
  4. セメントキルンでのエネルギーリカバリーは、“高塩素バイパスシステム”の実用化も進んでおり、今後の可能性が期待されます。
  5. 塩ビを含む廃棄物のエネルギーリカバリーの実現によって、塩ビリサイクルが総合的に進められます。(まとめ)

 経済財政諮問会議の「循環型経済社会に関する専門調査会」で「エネルギーリカバリーも有効なエネルギー回収手段としてマテリアルリサイクルと並んで位置づける」と提言され(2000年)、またエネルギーリカバリーはプラスチック製容器包装の再商品化手法の一つとして認められました。(2007年施行)。
 塩ビは単一製品ばかりでなく、最近は分離技術の進展で複合製品も含めてマテリアルリサイクルが進展しています。また塩ビに他のプラスチックなどが混在して分離できない場合でも、そのままフィードストックリサイクルすることができます。

 一方、様々なプラスチックや可燃物に塩ビが含まれる場合(特に建設系混合廃棄物)には、全てを選別回収することは容易ではなく埋め立てられることも多くなります。このような場合には、エネルギーリカバリーを有効に利用することができます。

 年間総焼却能力は、推計(2009年)で約4,000万tですが(図1)、ダイオキシン類対策特別措置法の施行を契機に、国内の産廃焼却施設は大幅に整備され、焼却炉数は大きく減少したにもかかわらず、年間焼却能力は増加しています。
 このような産廃焼却施設の充実、大型化を勘案すれば、塩ビを受け入れる設備能力は着実に増えつつあると言えます。

図1. 産廃焼却施設の推移(2010年環境省調査による)

図1.産廃焼却施設の推移(平成18年環境省調査による)

図2. 塩ビ廃棄物の受入れ可能なTR・焼却施設の全国マップ

図2.塩ビ廃棄物の受入れ可能なTR・焼却施設の全国マップ

 塩ビ工業・環境協会(VEC)は、関東建設廃棄物協同組合(関東建廃協)、DOWAエコシステム(株)(旧同和鉱業(株))と協力して塩ビ製品を含む混合廃棄物のエネルギーリカバリーの実証に取り組み、長期にわたって安定運転ができました。

【実証試験】

施設
エコシステム岡山(株)・流動床式焼却炉、発電
廃棄物
建設系混合廃プラスチック 総量約1,100トン
塩素濃度3~7%(塩ビ換算5~12%))
試験期間
2005年~2006年(1年半)
試験結果
①塩化水素による設備腐食は認められなかった。
②排ガス中のダイオキシン、塩化水素は規制値を大幅に下回った。
③安定運転についても、特段の問題はなかった。
結論
エネルギーリカバリー(焼却・発電)が技術的に可能であることを実証。

図3. 建設系混合プラスチックのTR処理試験フロー

図3.建設系混合プラスチックのTR処理試験フロー

DOWAエコシステム関係者のコメント:
 塩ビを含む混合建設廃棄物を、NOx、COやDXNの発生を抑えつつ継続・安定処理できたことは画期的なことと考えます。加えて、今回は破砕困難な金属塊、コンクリートガラ等の異物の混入が多く、前処理で非常に苦労したが、予め選別・破砕が出来ていれば、建設系混合廃棄物をそのまますべて投入することも可能であることが判りました。これは十分に選別したものであれば、東京都の最近稼動を始めた大型施設で焼却が進んでいるとのことからも証明されております。全国にはこのようなプラントが数多くあることは周知の通りであり、今後は塩ビ含みの廃プラのエネルギーリカバリーが進むことを願ってやみません。

 セメントキルンでの熱回収効率は80%以上と高く、資源節約に対する貢献は大きく、セメントキルンで代替燃料として利用される廃プラスチックは約30万t(2005年)で、年々増加の傾向にあります。このような廃プラスチック利用の増加にともない、塩ビなどの塩素含有プラの受入れ能力アップに繋がる「高塩素バイパスシステム技術」などの普及と高度化も進展しています。

高塩素バイパスプロセスと塩ビ利用への期待

 セメントキルンに投入された廃棄物中の塩素、アルカリ、硫黄などの揮発性成分はキルン系内で循環濃縮されて、トラブルの原因となります。そこで塩素成分をキルン外に排出して、塩素濃度を低下させる“塩素バイパスシステム”が多くのセメントメーカーで導入されています。

  • 通常は1~2%のバイパス率(発生ガス量に対する抜き出し量の割合)ですが、10%程度の高い塩素バイパス率で運転するいわゆる“高塩素バイパスシステム”(図4)も実用化されています。
  • このような塩素処理能力の高い設備では、塩ビを他の廃棄物に混合処理することも可能となってきました。

図4. 高塩素バイパスシステム

図4.高塩素バイパスシステム

 塩ビ混合廃棄物のエネルギーリカバリー・焼却処理は、マテリアルリサイクルやフィードストックリサイクルを補完するもので、塩ビ製品の種類や排出時の状況に応じて、これらを組み合わせ、資源の節約、環境負荷の低減と同時に経済合理性の追求が塩ビリサイクル実現化のための目標となります。塩ビのエネルギーリカバリー・焼却処理は、一定の制約があるものの、設備の充実によって、大きく進展しています。このような技術の進捗を背景に、埋立からエネルギーリカバリー・焼却処理への流れを促進するための仕組みづくりが今後の課題です。