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藤井会長新年ご挨拶
2025年1月9日
あけましておめでとうございます。平素は塩ビ工業・環境協会の活動に多大なるご理解とご支援を賜りまして、誠にありがとうございます。新年にあたりまして、ひとことご挨拶を申し上げます。
2024年の世界経済は、インフレ圧力が鎮静化するなか金融緩和への転換が進みつつありますが、自動車や産業機械などの製造業の伸び悩みなど、まだ景気回復の力強さは感じられていません。また、各国、各地域の回復ペースもまだら模様となっています。米国のトランプ政権の政策転換により、貿易摩擦や地政学的リスクが高まることが懸念されています。
このようななか、塩ビの生産・出荷は、年初は順調な滑り出しを見せたものの夏場にかけて低調に推移しました。後半には、世界経済の動向とともに緩やかに上向いてきたことから、暦年では150万トンレベルになる見込みです。国内では、円安による原料高が製造コストを押し上げるとともに、物価高に伴う個人消費抑制の影響を受けました。また、年始の能登半島地震をはじめ気候変動の影響と目される集中豪雨や洪水が日本列島を襲い、大きな損害をもたらしました。まさに国民生活や地域の経済基盤が大きく揺らいだ1年だったといえます。その一方で高水準の賃上げが2年続いたことや減税等の効果により個人消費が徐々に拡大してきています。また、あらたな政治体制のもとでの総合経済対策によって景気が回復し、上昇していくことが期待されています。特に災害復興を含めた防災・減災・国土強靭化に向けたインフラ整備やサステナブル社会実現に向けた省エネ、脱炭素等の取組みにおいては、塩ビ素材の有用性がいかんなく発揮され、社会に大きく貢献していくと考えています。
以上のような背景のもと、2024年に当協会が注力して参りました活動の内容と2025年の活動について簡単に紹介いたします。
まず、当協会の活動の大きな柱である広報活動については、2023年より若年層や主婦層への訴求を強化することを方針として取組み、2024年は、それをさらに強化しました。特にSNSを利用したタイアップ広告は、マンガを活用する等の工夫をこらし、従来のHP年間アクセス数をたった2週間で超えるという大きな効果がありました。今後、訴求点を充実させ、継続的に視聴される媒体となるように取り組んでまいります。また、塩ビを使った消しゴム作りという体験型出前授業は国内各地の学校で好評を博し、絶えず引き合いが来ています。東京都中央区の小学校で行われた「子どもとためす環境まつり」においても、全参加団体中で3位の人気を獲得しました。塩ビという「素材」を理解するにも、ワクワクする体験ということの重要性を痛感しました。さらに12月のエコプロ2024には「生活を豊かにする塩ビ」をテーマに、「近所の公園」をイメージしたブース設定により、大人も子供も気軽に立ち寄り、塩ビに触れる体験をしてもらうというコンセプトで出展しました。特に「海水から作られるプラスチック=塩ビ」として、海水から天日塩、電気分解、塩ビ樹脂、そして塩ビ製品という一連の流れについて写真やパネルだけでなく、実物を展示し、実際に見て、触れて、感じることで塩ビについて正しい理解が得らえるように工夫をしました。ブースは初日から盛況で、3日間で約4,000人の来場者がありました。インフラから生活に密着した身近な日用品まで幅広く使用され、社会生活にとって有用である素材としての塩ビは生活のなかの脇役ではなく、表舞台で活躍する主役なのだという意識をもって強くアピールしてまいります。
塩ビを用いた建材用途の関連では、塩ビ開口部建材の普及を通じて2050年のカーボンニュートラル実現に資するべく、省エネ・脱炭素、室内環境・健康を切り口としたPR資料(『カーボンニュートラル建築実現のために』という小冊子)を発刊しました。この小冊子については、当協会HPで公表するとともに、10月の記者会見においてカーボンニュートラル検討会の委員長である芝浦工業大学の秋元学部長から概略をご説明いただきました。居住空間において高効率設備を導入する前に、まずは建物の断熱性や遮熱性の向上を図り、暖冷房設備が処理する負荷を削減すること、そのためには熱の出入りが大きい窓開口部の断熱性能及び遮熱性能向上が重要になってまいります。今後、住居の温熱環境を整えることで居住時の快適性(睡眠や健康)を向上させる取り組みに注目したいと考えています。
住宅の高断熱・高気密で省エネに貢献する樹脂窓が普及しつつあります。加えて、世界的にサーキュラーエコノミーの考えが広く浸透し、樹脂窓リサイクルの事業は欧州各国に広がりをみせております。日本においても樹脂窓は、1980年代より北海道を中心に使用されており、今後、これらの使用済み樹脂窓のリサイクルチェーンの仕組みづくりを進めていくことが必要になってまいります。この問題意識の下、昨年1月に産学連携によるリサイクルシステムの実装化に向けた取組み指針としての「樹脂窓リサイクルビジョン」を公表し、9月には社会実装に向けた活動の認知及び理解の拡大等を目的として「第1回樹脂窓リサイクルシンポジウム」を札幌で開催しました。2025年はリサイクルビジョンの実現に向けて大きく飛躍する1年となります。さらに、資源循環向上にとって欠かすことのできないケミカルリサイクルの必要性と重要性がますます高まってくることから、2024年に引き続き塩素循環検討会の取組みを強化してまいります。
最後に、国際活動関係では、塩ビを含むプラスチックに関する大きな動き、すなわち、UNEP(国連環境計画)における「プラスチック汚染に関する条約策定に向けた政府間交渉委員会」への対応が挙げられます。昨年11月末に韓国の釜山で開催された5回目の会議(INC-5)では条約策定の合意を目指していましたが、各国の意見調整が整わず、合意は先送りされることになりました。これまで当協会も日本の対応方針に沿って政府及び関連業界団体と連携し、国内会議で意見陳述や情報提供など積極的に対応してまいりました。今後、本条約策定の合意に向けての協議は継続されますが、引き続き塩ビをはじめ多くのプラスチック製品が社会に対して有用な便益をもたらしていることなど、その価値と必要性を関連業界団体とともに強調してまいります。
昨年の夏の記録的な暑さや豪雨や洪水など気候変動の影響と思しき環境変化はますます大きくなってきています。塩ビ樹脂の優れた性能やマテリアルリサイクル性の高さを最大限に活かしていくことが、多くの難題を解決していくことに貢献し、地球環境改善に寄与するという信念をもって取り組んでまいります。今後も塩ビの有用性や可能性について広く広報し、みなさまのご理解を頂けるように活動を鋭意強化して参る所存ですので、引き続き関係各位のご協力をお願い申し上げます。
最後になりましたが、塩ビ事業に携わっておられる各社の益々のご隆盛と、皆さまのご健勝を祈念いたしました、年頭の挨拶とさせていただきます。
塩ビ工業・環境協会
会長 藤井 一彦